街中で出会う確率は高くはないものの、去年・一昨年に比べると徐々にレギュラー化しつつあるダブルブレストのジャケット・スーツ。私は90年代後半からスーツを着始めたので割と新鮮に感じていますが、80年代バブル期を謳歌した人だとダブルブレストは馴染み深く感じるかも知れません。
ダブルブレストに関する疑問の定番といえば『ボタンの留め方』ですが、ボタンの数や付き方で微妙に変わってきます。
定番はこんな感じ。ボタンが分かりやすいようにブレザーでやってみました。
一番よくある6ツボタンタイプだと、真ん中一つが多いです。形によっては上2つを留めるタイプもあったりします。
シングルブレストのジャケットと一緒で一番下を留めない事が多いんですが、あくまで飾りになっているシングルと違い、ダブルの場合は一番下も留められる構造になっている事が多く、ダブルで一番下を留めるのはOKな様です。
シングルは着席時などに前のボタンを開けますが、ダブルは本来の着方でいくと着席時も外さないのが正しいそうです。しかし最近は細身で前を開けてもサマになるダブルブレストジャケットも多く、ピッティ・ウォモ等のスナップを見るとガンガン開けている人が多いです。
[出展] Pitti Uomo 82 Picture Gallery / GENTLEMAN’S GAZETTE
比較的おおらかなイタリアやアメリカだけの話かと思いきや、厳格と言われる英国のチャールズ皇太子でも前を開けている事がある模様。しかし、見たところ前を開けている時はカジュアルスタイル限定の様なので、時と場合による…って事なんでしょうか。
[出展] The Return of the Double-Breasted Jacket / eHow
ちなみにスリーピースでウェストコートがある場合は、開けてもOKな様です。
[出展] Alessandro Squarzi. / Hein Fienbrot
本来のダブルブレストのボタンの留め方はさておき、人によっては結構アレンジしていることもある様です。
例えば6つボタンの一番下だけ留めるパターン。これは私も時々やります。Vゾーンが開いて少しリラックスしたムードになります。ボトムスや小物に合わせて使い分けます。
私の友人ニコラは特殊な留め方。前になる見頃を折り返して、反対側のボタンに留めています。見慣れないので少し驚きましたが、一ヒネリ加わえる時に良いかも知れません。ビジネス向きではないかな。
Today in #Rome at Ergife Palace Hotel for Sartoria Sodano event. #NicolaRadano #SartoriaSodano
真似してみますた。
ラペル大丈夫かな…。
最後に、以前にどこかのサイトで見かけたんですが参考画像を探せなかったスタイルを2つ。
両側をそれぞれ表のボタンに開くようにして留めるパターン。もう前を閉じる気ゼロです。アリかナシかはさておき、ラペルに無理なシワが入るような気がして私はやろうと思いませんw
こちらは先程のニコラのスタイルの様に、身体の左側の見頃を折り返して留めるスタイルなんですが、本来内側にくる右側の見頃を裏にあるボタンではなくて表に重ねる様にして留めるスタイル。
前から見ると反対に重なったようになります。日本だと死装束の合わせ方の様で縁起が悪く思われるかも…。ボタンに無理な力が加わりそうだし。
「本来の着方」というのはもちろん理解した上で、色んなアレンジを加えることは個人的には問題ないと思っています。もちろん、TPO・TPPOを理解・配慮した上で許される場合にのみ…ですけどね。トラウザーズの裾のダブル直しも、最初は雨に濡れないように捲り上げたのを皆が真似しただけって話もありますし。服飾史って意外とそんな感じで変化したりするんですよね。
こちらはシングルブレストですが、ユナイテッドアローズの鴨志田さんは時々本来留めない一番下のボタンを留めています。本来留めないボタンを留めているので、ジャケットのウエスト周りにシワが入っていますが何故かオシャレな感じ…不思議です。
[出展] 鴨志田康人さん / B.R.ONLINE
他の写真では一番下開けているので、当然「本来留めない」ことを分かっていて、あえてやってるんですね。
ジャケットの一番下を留めると言えば、元アメリカ大統領のジョン・F・ケネディ。演説時などにシャツが見えるのを嫌ったとかナントカ。ケネディ人気でちょっと流行ったらしいですよ、このスタイル。
[出展] スーツボタンの留め方 考:① / ニッポンの“礼装:メンズフォーマル”予備校
今はクラシック回帰がトレンドで「本来の〜」っていう着方が主流ですが、もしかするとまたモードで攻めたスタイルが流行して色々変わってくるのかも知れません。10年後に社会の窓を開けるスタイルが流行してたらどうしよう……。