本来はポロ競技をルーツとするスポーティなアイテムだからビジネスには合わないとか、ビジネスシーンも随分カジュアル化してるし市民権も得てるから大丈夫だとか、色んな意見が飛び交うボタンダウンシャツですが。私はしれっと仕事で着ています。ウェブ制作の仕事って基本ドレスコードゆるゆるですからね…弊社みたいにネクタイ着用な方が珍しいくらい。
ボタンダウンシャツはポロ競技のシャツに着想を得て米・ブルックスブラザーズが製品化したと言われています。1950年代くらいのアメリカの名門私立大学の学生「アイビーリーガー」たちが好んでボタンダウンシャツを着ていたので、アイビースタイルの定番アイテムになっていますね。
[出展] The Ivy Style Primer Gentleman’s Gazette/
調べてみると、アイビースタイルは単なるファッションの流行ではなく、その根底には当時のアイビーリーガーが抱いた「新しいアメリカ像」の様なものが投影されていた様です。
彼らアイビーリーガーというのは、将来のアメリカを牽引するものすごいエリートなわけです。そして彼らの多くは裕福な家庭に生まれ育った富裕層だったそうです。彼らの親は贅沢なオーダーメイドスーツに身を包んでいた様ですが、将来のアメリカに健康的なたくましさ・庶民性・清貧さを思い描いた彼らは既成品のジャケットを着用します。ラグビー等でガッチリ鍛え上げられたマッチョボディに既成品のジャケットを着るので、胸板で三つボタンの一番上が閉まらないのがカッコいいとされ、そこから段返り三つボタンに発展した…なんて話もあります。
アイビーリーガーは自分たちが有名私立大学出身であることを誇りに思っていた様で、大学のスポーツクラブの制服であるブレザーやら出身校を示すレジメンタルタイを好んで着用し、当然スポーツアイテムでもあるボタンダウンシャツが好まれたみたいです。
つまり、一種の反骨精神の現れなんですね。
ボタンダウンシャツはその他、60年代のロックミュージシャン等にも愛された様です。
ビートルズやモッズバンド達にはタブカラーシャツやラウンドカラーシャツなど様々なタイプのシャツが着られていた様ですが、その中にボタンダウンシャツもあった様です。
ビートルズのオフショット?っぽいのに写ってたりとか
[出展] THE BEATLES / おちゃづけ2@カリフォルニア = ochazuke2@California =
The Whoもちょっと装飾性強いですけどボタンダウンシャツ着てます。
[出展] The Who in talks for 60s TV show / Telegraph
[出展] The Who announce 50th anniversary tour and plans to retire / NME.COM
清潔感溢れるエリートであるアイビーリーガーのスタイルからすると、60sUKロックミュージシャンたちは労働階級ならではの暴力性みたいなものが秘められているのですが、反骨という意味では似通う部分があるかも知れません。
その後、70年代後半から80年代にかけてロックミュージックがパンクロック・ハードロックが主流になるとTシャツになって、ボタンダウンシャツはロックの表舞台から姿を消す様に見えますが、スペシャルズやスタイル・カウンシルを率いるポール・ウェラーがボタンダウンシャツを着ています(スタカンは写真見つかりませんでした)。
スカバンドの代表格・スペシャルズ。
[出展] FRED PERRY x THE SPECIALS 30TH ANNIVERSARY SHIRT / 安寧と怠惰
最初はスポーティアイテムの一つでしかなかったボタンダウンシャツですが、今ではファッション誌でこんな風にフィーチャーされたりすることも。カラーピンとかちょっとやり過ぎ感無くもないけど…まあいっか!
[出展] MEN’S Ex 2016年5月号