WWDC 2013が開催され、iOS7や新Mac OS等の発表がありました。
その中でも今回はiOS7について個人的な見解を。
フラットデザイン
iOS7は噂通りジョナサン・アイヴが推したという「フラットデザイン」化しましたね。
最新版のWindows OSやWindows Phone、Google+等のサービスなどを始め、Webデザインの世界でも去年くらいから「フラットデザイン」が一気にトレンド化したしたわけですが、iOS登場時からずっと貫いてきた「スキューモーフィックデザイン」がついにiOS7を境にレガシー化するわけですね。胸熱。
「フラットデザイン」はその名の通り、シャドウやグラデーション等の表現が少ない平坦でシンプルなデザインです。Web2.0なんて言われていた頃のデザインがリアル感を前面に出していたのとは対照的です。
ロンドンの地下鉄標識に着想を得たというWindowsのMetro UI(その後、商標問題でModern UIに名称変更)や、最近のGoogleサービスで採用されたものが代表的です。
「スキューモーフィックデザイン」とは現実世界にあるものに極力近づけることで、操作方法を現実世界での経験から想起させることを狙いとしたデザインです。そのためグラデーションやシャドウ等の要素をふんだんに使用したリッチなデザインが特徴です。
例えばですが、ボイスレコーダーアプリにおいて最低限必要なのは「録音」「停止」「再生」等の操作ボタンだと思いますが、スキューモーフィックデザインではリッチなマイクロフォンのデザイン等が施されています。本来であれば「無駄」にも成り得る訳ですが、現実世界での経験をそのまま活かせる事で、操作方法を直感的に理解できる…という考え方ですね。
この二つのデザインはどちらが優れているとか劣っているという事ではなく、インターフェイスデザインに対する哲学の違いとも言えます。それについてはWeb・GUIデザインで有名な中村勇吾氏が以前にTwitter上で触れていました。
アップル製品、プロダクトデザインでは素材に忠実に向き合ったミニマルなデザインを指向してるが、インターフェースデザインではフェイクの立体感や材質感を多用し、スクリーンという実平面はないものとして、仮想的な空間性を並行的に存在させ、マキシマムな「てんこ盛り」デザインを展開してる。
— Yugo Nakamuraさん (@yugop) 2012年2月2日
要するにプロダクトとインターフェースの意匠の方向性が全く逆なわけだが、この矛盾こそが「ただのグッドデザイン」に終わらない、面白さの源泉だという見方がある。一方で、「デザインの首尾一貫性」という面ではなんか気持ち悪いという見方もある。私はずっと「気色悪っ!」って思ってる。
— Yugo Nakamuraさん (@yugop) 2012年2月2日
要するに、スクリーンを「プロダクトの延長の実平面」と捉えるか、「仮想的な空間を覗く窓」と捉えるかの違いで、どちらもそれぞれに、気持ち良い面、気持ち悪い面をもっている。そこの選択にいつも頭を悩ます。
— Yugo Nakamuraさん (@yugop) 2012年2月3日
もう少し書くと、あるルールの仮想性の上に違うルールの仮想性がどんどん重層していく、WEBならではの「仮想のコンポジション」みたいなものは確かにあって昔から脈々とそのバリエーションが編み出されるわけだけど、まあ、なんというか、バリエーションだわなあ、とは思う。
— Yugo Nakamuraさん (@yugop) 2012年2月3日
で、WEBにおける「仮想のコンポジション」は色々と楽しかったりするんだけど、「ブラウザやOSのUIは、別にそこに参加しなくていいんじゃね?」ということです。
— Yugo Nakamuraさん (@yugop) 2012年2月3日
GUIデザインを多く手がけた人ならではの発言だなーという気もします。これはiOS7がフラット化するかも〜なんて騒ぐ前のツイートですんで、そういう意味では流石だなぁと思ったりもします。
iOSが登場した当時のデザイントレンドというのもiOSのスキューモーフィックデザインに大いに影響したとは思いますが、個人的にはそれ以上に「携帯電話を再発明する」という当時のiPhoneの製品コンセプトによる部分が大きいと思います。
というのも、スマートフォンというカテゴリ自体はiPhone登場以前にも存在こそしたわけですが、当時のスマートフォンというのはビジネスユースの携帯端末という印象で今のような形ではありませんでした。その枠組みを超えて「誰もが使える超クールな携帯端末」という目標を掲げていたiPhoneにとって、現実世界を閉じ込めた様なスキューモーフィックデザインはiPhoneだけでなく当時のスマートフォンにおいて必要であったと思います。
しかし、ここまでスマートフォンが定着してユーザがタッチUIにも慣れてくると、タッチUIを使うための導線のためのスキューモーフィックデザインは冗長になりうるとも言えるんじゃないかと思います。無理に現実世界に近づけずともタッチUIに特化したUIができてきて、それがフラットであるというのは不思議では無いんじゃないかと思うんですね。
もちろん優劣という話ではないので、フラットデザインにもデメリットはあります。例えばWebデザインの場合リンクであるという事を示すためにグラデーションや僅かなシャドウを入れることは悪ではありませんし、場合によっては必要にもなります。
フラットだからといって色をアホみたいに入れた某OSのようになるのは…個人的にはあまり好ましいとは思いません。私としてはAppleらしいフラットデザインになって良かったかな…と少しホッとした気もします。
UIの利便性が飛躍的にアップしそう
公式ムービーなんかを見てると、Wi-Fiのオンオフ切り替えだとか、フォトライブラリ内を閲覧するときのフィルタリングだとか、今まで切望されていた機能の多くが結構実装された気がします。
なんかネット上の一部では「Android化してるじゃん」という意見もありましたが、便利になるのは別にいいじゃねーかと思うのですよね。Androidが嫌だからiOSを使うとかiOSが嫌だからAndroidを使うとかっていうのは、割と使用動機としてはネガティブだと思うので、多分ずっと何か文句をつけなきゃいけなくて大変だなぁと思ったりもします。まぁそういうユーザも必要なのかも知れませんけどね。
そういえば私は前々から「iOSの日本語変換がアホすぎて困る」と思ってたんですが、今回のアップデートで変わるんですかね…やっぱ本国じゃないとスルーされちゃうのかな…。できればそれ一番やってほしいな…。
まあ楽しみにしております。